ニュージーランド北島のワンガヌイ川は、流域に暮らすマオリの部族が700年以上にわたって支配し、大切に守り、かつ頼りにしてきたもので、彼らにとっては、聖なる力をもつ「アワ・トゥプア」(祖先の川)だ。しかし、19世紀半ばにヨーロッパ人が入植を始めると、この川に対するマオリの権限は徐々に奪われ、最終的には政府によって完全に消し去られた。
マオリの人々は川が汚され、衰弱していくさまをずっと見てきた。何よりも耐え難かったのは、広範囲に及ぶ水力発電開発の一環として、水源からの流れが本来と異なる集水域に向けられ、上流域の自然な流れが奪われたことだった。人間において最も神聖な場所は頭であると考えるマオリにとって、上流域は祖先であるワンガヌイ川の頭に当たる。流れの改変は、マオリの文化に対する最大の侮辱だった。
だが2017年3月20日、驚くべきことが起きた。ニュージーランド政府は、「川は生きた存在である」という、かねてからのマオリの主張を法律で認めたのだ。この日に議会で可決された法案で、ワンガヌイ川とこの川にまつわるすべての地勢および形而上の要素は、「テ・アワ・トゥプア」という不可分の生きた存在であり、「法人がもつあらゆる権利、力、義務、責任」を有すると宣言された。
法律によって得られたものとは?
政府は「過去の過ちを償い、癒やしの取り組みを始めたい」と述べた。また、テ・アワ・トゥプア法は、ワンガヌイ川を中心とする、政府とマオリの「持続する新たな関係の始まり」を象徴するものだと述べた。一国の政府としては謙虚な声明だ。だが、ワンガヌイ川の所有権が流域の部族に返されるわけではない。そこまではまだ、政治的にハードルが高いのだ。
では、この法律によって何が得られるのか?「認識です」と話すのは、この法律の実施を担当する部族団体の会長、ジェラード・アルバートだ。それは、川は断片的な無生物で構成されているとする従来の西欧的な発想に基づいた認識ではなく、「不可分の生きた存在」だというマオリの理解に基づく認識だ。
川に法的な人格が与えられたことで新たな機会が生まれたと、アルバートは考えている。「マオリとパケハ(マオリでないニュージーランド人を指すマオリ語)が川を囲んで向き合い、協力の妨げになっている壁を取り払ってワンガヌイ川を含む全員のためになることは何かを真剣に考える機会」だ。
※ナショナル ジオグラフィック3月号「マオリの聖なる流れ」では先住民マオリの人々が祖先と仰ぐ川に、ニュージーランド政府が法的な人格を認めた背景について説明します。
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March 01, 2020 at 04:02AM
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