
水は、原子力発電に欠かせない物質だ。だが、東京電力福島第一原子力発電所の事故は、その水を制御できなくなったことで引き起こされた。そればかりでなく9年たった今も、水との戦いは続いている。炉心溶融(メルトダウン)を起こした原子炉内に残る、溶け固まった燃料(デブリ)を冷やす水と、建物内に流れ込む地下水による汚染水が発生し続けているためだ。事故で何が起き、どうして作業は遅れているのか。福島第一原発事故と水との闘いを、振り返る。(編集委員 吉田典之)
2011年3月11日に東日本大震災が発生した時、原発は揺れを検知して発電を停止し、原子炉の冷却が始まった。だがその後、堤防を越えて発電所を襲った津波で、施設内の電気設備は浸水して全ての電源が失われ、電気で動かしていた冷却水の循環も止まってしまった。
緊急停止直後の原子炉はまだ熱く、しかも冷却水が流れなくなった結果、炉内の温度が上昇し続けた。異常な高温になった炉の中で、通常は起こらない化学反応が起こり、水から大量の水素が作られて炉から建物内へと漏れ出した。軽い水素は建物の天井部分にたまり、15日までに、1、3、4号機で、建物の屋根を吹き飛ばす水素爆発を相次いで起こした。
1~3号機では高温で炉内の燃料が溶け、下へ流れ落ちる炉心溶融も起きた。
事故後9年を経た今も、復旧を阻んでいる大きな壁の一つが、原子炉やタービン建屋内にたまる「汚染水」だ。
事故発生時は、緊急措置として海水も炉内に投入して冷却水に使った。現在はデブリの温度は安定しているが、それでも今も水をかけ続けている。冷却水は直接、デブリ内のセシウムやストロンチウムなどに触れて汚染されるため、ALPS(アルプス)などと呼ばれる浄化装置を通し、放射性物質を取り除いている。
問題は、建屋内に地下水や雨水が流れ込み、冷却水と混ざって、汚染水の量を増やしていることだ。
地下水の源は、福島第一原発がある「浜通り」の平野部と、西側に連なる阿武隈山地から流れる伏流水と考えられている。建物の地下部分のどこかにひび割れがあり、そこから入り込んでいるとみられるが、その場所や状況は不明で、修理もできない。
流入防止のため、原発を取り囲むように、地中に冷凍装置を埋めて土を凍らせる「凍土壁」を造った。2016年3月から凍結を始めたが、流入量は減ったものの完全には止まらず、今も1日あたり180トンの汚染水が発生している。
浄化装置でも取り除くのが難しいのが、トリチウム(三重水素)と呼ばれる水素の仲間だ。放射性物質の一つで、宇宙からの放射線でも作られ、自然界にごく微量が存在する。水道水にも含まれている。水の中の水素が置き換わっているため、除去は難しい。原発の冷却水にはある程度含まれ、国内外の原発では海などへ放出しているが、福島第一原発ではタンクにため続けている。
現在、東電はタンク約1000基に処理水約119万トンを保管する。2020年末までに137万トン分のタンクを確保する予定だが、それでも、東電の試算によると22年夏には満杯になる。
政府の有識者会議は2月、処理水を希釈して海に流す海洋放出と、蒸発させて大気に拡散させる水蒸気放出を提言する報告書をまとめた。特に海洋放出は、世界中の原発で行われており、確実に実施できるとしている。
政府は今後、具体的な処分方法や時期を決めるが、処分量や開始時期によっては全量の放出には数年~約30年かかる。
漁業関係者は、風評による被害を強く懸念している。どのように理解を得て進めていくか、重い課題だ。
原子力発電は、ウランなど「核燃料」の原子核が分裂する時に発生する熱で、水を蒸気に変え、発電機の羽(タービン)を回して電気を作る。蒸気になると体積が増え、外に噴き出そうとする力を利用している。この原理は、石油や石炭を使う火力発電や、石炭を燃やして汽車を走らせる蒸気機関車も変わらない。
核燃料は、細長い棒状の金属製ケースに収められており、反応させる部分の長さを調節して発熱量を制御する。
蒸気は、冷却装置で再び水に戻し、原子炉へと送り返される。この水を冷やすためにも、別の水が使われる。原子力発電では大量の熱が発生するため、冷却用の水も十分な量が必要になる。原子力発電所を海のそばに造るのは、膨大にある海水の冷たさを利用するためだ。
発電をしていない時も、核燃料はある程度の熱を出している。そのため、使っていない燃料棒は水を入れたプールに沈め、冷やして保管している。
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March 11, 2020 at 03:00AM
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福島第一原発 震災から9年間続く「水との闘い」 - 読売新聞
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