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車内でも蛇口から水が出る幸せ 旅先でもスマートな給排水を - 朝日新聞

前回に引き続き、キャンピングカーの「設備」のお話です。今回は水回りについて。旅先などで少しでも水が使えるというのは、非常に助かるものです。では、実際に車内での水のシステムはどうなっているのでしょう。

給水と排水のシステムが必要

そもそも、国が定めるキャンピングカーの「構造要件」には「水道設備があること」とあります。構造要件上の水道設備の定義を以下に抜粋します。

水道設備とは、次の各号に掲げる要件を満足するものをいう。

ア 10リットル以上の水を貯蔵できるタンク及び洗面台等(水をためることができる設備をいう。以下同じ。)を有し、タンクから洗面台等に水を供給できる構造機能を有していること

イ 10リットル以上の排水を貯蔵できるタンクを有していること

つまり、水を入れたタンクを積んでいるだけではダメで、「清水タンク→洗面台(水をためられる機構)→排水タンク」という一連の構造機能=システムがなければならない、ということです。

水の容量も決められていて、清水も排水も10リットル以上。つまり、出した分は受け止めなくてはならないということになります。

車種によって容量や方式は異なりますが、外部から清水をタンクに用意し、それをポンプで洗面台に給水し、使い終わった水は排水タンクにため、最終的には外部に排水を取り出して処理する、という流れになります。

ただし、前回紹介した炊事設備と同様、構造要件は8ナンバーのキャンピングカー(キャンピング車として特種車両登録)に限った話なので、4ナンバーや5ナンバーの車両は当然除外されます。

考えてみれば、なかなか大変なしくみです。日本製のキャンピングカー、中でも人気のバンコンタイプなどは車両サイズそのままに居住空間を架装するものですが、限られた空間内にベッドやテーブルのほか10リットルサイズのタンクが二つと洗面台を取り付けるのですから。

ヨーロッパ製キャンピングカー(自走式)のキッチン。蛇口をひねると自動でポンプが動き水が出る。蛇口だけでなくシンクも構造要件だ(Photo:ADRIA mobile)

ヨーロッパ製キャンピングカー(自走式)のキッチン。蛇口の栓をひねると自動でポンプが動き水が出る。蛇口だけでなくシンクも構造要件だ(Photo:ADRIA mobile)

可搬式と固定式、水道設備は2種類

さて、その給排水設備ですが、大きく分けると二つのタイプがあります。

●国産車で一般的な可搬式

国産キャンピングカーやヨーロッパ製の小型キャンピングトレーラーなどで多く使われるのが、ポリタンクを使った可搬式です。タンクは簡単に車から取り外せるので、ホースを引かなくても水場に運んでくめるようになっています。

給水がポリタンクの場合、排水タンクもポリタンクが使われていることが多く、同じく取り外せるようになっています。たまった汚水は、タンクを取り外して所定の場所(自宅、あるいはキャンプ場やRVパークなど許可された場所)に捨てることになります。

可搬式はシンプルな方式ですが、持ち運べるタンクの大きさや重さに限界がありますから、容量は多くても20リットル程度でしょう。20リットルを満タンにすれば重さは20キロです。取り出しや取り付けのしやすさをチェックしておきましょう。

●大容量の固定式

アメリカ製キャンピングカーやキャンピングトレーラー、ヨーロッパ製の自走式で使われるのが、固定式のタンクです。給水口はガソリンの給油口のように車外に開いていて、外から直接ホースで水道水を入れるようになっています。

容量は数10リットルから、大型なものになると200リットル以上のものもあります。

排水タンクも同様に固定されていて、排水ホースを接続して所定の場所に捨てることになります。取り外せるタンクと違って持ち運べませんから、トイレの処理などと同様に、所定のダンプステーションで処分することになります。

ヨーロッパ製の大型キャンピングトレーラーの、固定式の清水タンク。大型のキャップを開ければタンク内の清掃ができるようになっている(Photo:Hobby)

ヨーロッパ製の大型キャンピングトレーラーの、固定式の清水タンク。大型のキャップを開ければタンク内の清掃ができるようになっている(Photo:Hobby)

タンクの水、飲む? 飲まない?

可搬式タンクの場合、タンクの状態は目視できますし、洗浄も簡単です。場合によっては新しいタンクに入れ替えてしまうこともできるでしょう。

清潔に管理できるなら、飲むことに何ら問題はありません(ただし、水が入ったまま長期間放置されていた場合などは避けましょう)。

問題は固定式タンクの場合です。取りはずして中を洗うことはもちろん、中がどんな状態か見ることもほとんどできません。

このタイプのタンクには専用の洗浄剤がありますので、それを使用します。洗浄剤と水を入れ、排水。空になったらまた水を入れて排水してゆすぎます。また、配管途中に取り付ける浄水フィルターなども市販されています。こまめに洗浄し、フィルターを通せば飲むのも差し支えないでしょう。長期間タンクにためっぱなしになった水が良くないのは、可搬式と同じです。

ちなみに、わが愛車はアメリカンクラスCなので固定式。過去に15年以上経過したタンクや配管をチェックしたことがありますが、意外なほどきれいで、問題ないように思えました。

我が家では、皿洗いや歯磨き、洗顔は清水タンク、料理や飲み物には市販のペットボトルの水、と使い分けています。歯磨き後のうがいで多少飲み込んだりもしますが、それで不具合があったことは一度もありません(洗浄剤で時折手入れをしている我が家の場合です)。

外部に設けられた給水口。ここから水を入れる。いたずら防止で鍵がかかるようになっている(Photo:Hobby)

外部に設けられた給水口。ここから水を入れる。いたずら防止で鍵がかかるようになっている(Photo:Hobby)

旅先で水をもらうときはマナーを守って

長らく旅をしていると、途中で給排水したくなることもあります。排水については説明したとおり、所定の場所でルールとマナーを守って処理すること。道の駅やサービスエリアのトイレや洗面所に流すなど、マナー違反は慎みましょう。

それ以上に注意したいのが給水です。まず、基本的には許可を得て水をもらうこと。上下水道とも、無料ではありません。立ち寄った施設で水をもらうときは、かならず管理者に許可を得ましょう。

ここで気を付けたいのがガソリンスタンドです。給油に寄ったついでにお水をもらう、というのはあり得るシチュエーションですが、飲み水にする可能性があるならばその旨を伝えて「飲用可能な水」をもらいましょう。

地方のガソリンスタンドなどでは、洗車のための水に井戸水やくみ上げ地下水を使っている場合があります。あくまで洗車用ですから、飲める水かどうかはわかりません。どこかで水をもらう時は、飲める水であることを確認しましょう。

熱湯や汚れに注意! 手入れは入念に

前述のとおり、排水はすべて排水タンクにたまります。構造要件上、給水も排水も「10リットル以上」とありますが、50リットル使ったのに排水が30リットル、なんてことは絶対にありません。供給量と同様以上に受け止めるタンクは必須です。

汚水の処理については前項で説明した通りですが、可搬式、固定式ともに注意すべき点はあります。それは、排水の内容に気を付けることです。

通常、洗面台(シンク)から排水パイプまでをつないでいる配管の素材は車によって違います。が、金属を使うことはほとんどなく、ポリ塩化ビニール管や一般的なゴムホースの場合もあります。そこで気を付けたいのが、熱湯は流さないこと。

これは家庭用シンクでも言えることですが、あまりに高温の液体を流すと、配管が傷みます。

また、油汚れにも要注意。油の浮いたスープ(例えばラーメンの汁など)を流せば、当然配管内部や排水タンクは汚れます。放置しておけば悪臭の原因になることもあります。

固定式の場合は排水タンク用の洗浄剤もありますから、清水タンクと同様にお手入れすればOKです。可搬式の場合は、時々中を洗浄しましょう。中性洗剤と水を少量入れて振り洗いするだけでもかなりきれいになります。

8ナンバーでないキャンピングカーなら、構造要件は関係ないので給排水の容量にも規定がない。入手しやすい2Lペットボトルを利用した、簡易型給排水の一例(Photo:Smile Factory)

8ナンバーでないキャンピングカーなら、構造要件は関係ないので給排水の容量にも規定がない。入手しやすい2リットルペットボトルを利用した、簡易型給排水の一例(Photo:Smile Factory)

「ごみをその辺に散らかさない。所定の場所に捨てるか極力持ち帰る」。これはキャンピングカー旅の常識ですが、給排水も同様です。

自分の旅先は誰かの地元。生活を持ち込んで楽しむなら、給排水もスマートに楽しみたいですね。

(TOP写真:Dethleffs)

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PROFILE

渡部竜生

キャンピングカージャーナリスト。サラリーマンからフリーライターに転身後、キャンピングカーに出会ってこの道へ。専門誌への執筆のほか、各地キャンピングカーショーでのセミナー講師、テレビ出演も多い。著書に『キャンピングカーって本当にいいもんだよ』(キクロス出版)がある。エンジンで輪っかが回るものなら2輪でも4輪でも大好き。飛行機マニアでもある。旅のお供は猫6匹とヨメさんひとり。

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