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凝り性シェフの“問題作” 川のようにバター滴る「ジュワッサン」/なんすかぱんすか - 朝日新聞社

原宿のキャットストリート沿い、極彩色でペインティングされた外観が異彩を放つ「なんすかぱんすか」。店名もそうだが、パンの名前も謎すぎる。「お兄さんの気まぐれ」「レオンの息子」など、「どんなパンすか?」と訊(き)きたくなる。

クロワッサンには「ジュワッサン」という名前が。本当にじゅわじゅわちゅるちゅると、川の流れのようにバターが滴ってくる! 表皮もバターで揚げたみたいに猛烈にぱりぱりさくさく、中から甘じょっぱくバターが溶けだす感じは、塩パンのようでもある。

以前、「COURTESY」時代にも当連載に登場した青柳吉紀シェフ。手間も原価も考えず、ついつい凝りすぎてしまう男である。「ジュワッサン」は、小麦粉と同量(粉対比100%)のバターを折り込む。通常のクロワッサンのなんと約2倍の量だ。

「フランス産ではなく国産バターで作ろうと思った。でも、なんか味が足りないなと思って足していったら、100%になりました。折り込むときバターに塩をふりかけて、クイニーアマンのように甘じょっぱくしています」

凝り性シェフの“問題作” 川のようにバター滴る「ジュワッサン」/なんすかぱんすか

ジュワッサン

ぱりぱりはらはらと割れるのは、驚異的折り込みテクニックのたまもの。リバースシーター(折り込み生地を伸ばす機械)に生地を通すときにコツがある。

「強引に通して、わざと加圧させてグルテンを切断する。気泡を一気に広げるイメージです。グルテンが多いところと少ないところを作ります」

フルーツサンド「苺(いちご)とバナナと」は、食パンの舌触りはぷるっ、弾んでふわっ。イチゴがぶちゅっ。とろとろーっとクリームがとろけるとともに、パンに塗られたベリーのジャムが溶け、イチゴの芳香はさらにあでやかとなる。バナナのほうは、ベリーではなくキャラメル。苦みばしった香りと、バナナのむんむん感が、小麦フスマ(小麦の皮の部分)の香りとハモりまくる。

凝り性シェフの“問題作” 川のようにバター滴る「ジュワッサン」/なんすかぱんすか

苺とバナナと

しっとり感、口溶け、香りのうつくしさ。それらを満たして、フルーツもクリームも邪魔しないというだけで十分すぎる仕事だが、凝りすぎてしまう男はそれで満足せず、フルーツサンドに合う全粒粉食パンを開発。口溶けをよくするため、小麦粉と水を合わせて5日間も冷蔵庫で寝かせる。

この間、酵素の力で小麦が甘く分解されるように、はちみつを加える。「日本のはちみつで非加熱のものがなかなかなくて、最高級のものになりました」。パンに塗るジャムも、イチゴだけではなく、野いちご、グロゼイユ(赤すぐり)、ルバーブを加えて自ら煮る。

「水バゲット」も謎のネーミング。「バゲット生地(商品名『レオン』)にどんどん水をぶちこんでいったら140%になりまして」と軽く言うが、これも通常の約2倍というとんでもない量。

凝り性シェフの“問題作” 川のようにバター滴る「ジュワッサン」/なんすかぱんすか

水バゲット

皮の歯切れはあまりに軽い。そして、「なんじゃこりゃー」と絶叫したくなる、トーンの高い甘さ。中身はういろうのようにぷりっぷりつるんとして、おかゆレベルにやわらかく、とんでもない甘みがほとばしる。

バゲット生地は、小麦粉、水、酵母、塩で作られるパンだが、もうひとつ“反則”の材料を加える。

「フランスのパン・オ・グリュオーをヒントに、牛乳を入れました。あまりにもおいしすぎて禁止された時代があったそうなんです。牛乳のおかげで歯切れも出ます」

凝り性シェフの“問題作” 川のようにバター滴る「ジュワッサン」/なんすかぱんすか

神山食パン

「神山食パン」もまた凝りすぎている。IPA(苦みに特徴のあるクラフトビール)に使う香りの強いホップから起こしたホップ種を使用。鼻を近づければ、すがすがしいホップの香りがすーっと駆け抜けていく。ばりばりの薄い耳、エアリーで一瞬にして溶ける中身、広がるミルキーさ、じーんとくるうまみ、トーストすればばりっばりに爆裂する。

「フランス産小麦をひたすら低速でかたかたと30分かけて混ぜます。ストレスはかけずに時間をかけてやれば、ボリュームも歯切れも出るんです」

フランス産小麦といえば中力粉(たんぱく量が少ない)。食パンには強力粉を使うのが普通なのに、またまた凝りすぎているではないか。材料も製法も量も手間もすべてが凝りすぎ。妥協知らずの追求が生み出すのはネクストレベルのおいしさだ。

凝り性シェフの“問題作” 川のようにバター滴る「ジュワッサン」/なんすかぱんすか

神山食パン

なんすかぱんすか
東京都渋谷区神宮前3-27-3
8:00~19:00(売り切れ次第終了)
月火および不定休(インスタグラムで確認を)

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    PROFILE

    池田浩明

    佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
    日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)
    http://panlabo.jugem.jp/

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    March 31, 2020 at 08:52AM
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