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的川博士の銀河教室:的川博士の銀河教室 591 リュウグウの科学(その1) - 毎日新聞

隙間だらけの小惑星

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機「はやぶさ2」に搭載(とうさい)した中間赤外線カメラ(TIR)で得られたデータに基づいて、「小惑星リュウグウの表面は、隙間(すきま)だらけ(多孔(たこう)質)の物質でできている」という研究結果が導かれ、英国の科学雑誌ネイチャーに掲載(けいさい)されました。

 「はやぶさ2」が訪れたリュウグウ(写真1)は、C型という小惑星の仲間です。“C”はCarbonaceousの頭文字で、「炭素質」ということ。約46憶(おく)年前に太陽系が生まれたころの物質(始原物質)を保存していて、「太陽系の化石」とも呼ばれています。でも、これまでの世界の研究では、「どんな物質がどのように集まってできた天体なのか」については、ほとんど分かっていないという状況(じょうきょう)でした。これまで「はやぶさ2」みたいに近くで徹底的(てっていてき)に観測した探査機がいなかったからでしょうね。

 「はやぶさ2」のチームは、2018年6月にリュウグウに到着(とうちゃく)して以来、つぶさに表面の観測を実施(じっし)し、特に搭載した中間赤外線カメラ(写真2)で、世界で初めてこのC型小惑星の全球連続撮像(さつぞう)を自転1回の間、連続で行いました。動画をJAXAのページ(http://www.hayabusa2.jaxa.jp/topics/20200317_nature/index.html)で見ることができます。

 「サーモグラフィー」(熱撮像)と呼ばれるこの方法によって得たデータを基にした考察により、リュウグウは、隕石(いんせき)の一種である炭素質コンドライトや地球の石などに比べて、非常に「温まりやすく冷めやすい」ことが分かりました。

 またより詳(くわ)しい解析(かいせき)によって、リュウグウが極めて隙間が多くスカスカ(多孔質)で、凹凸(おうとつ)の激しい構造をしていることも分かりました。表面にごろごろしている岩塊(がんかい)とその周辺の土壌(どじょう)はほぼ同じ温度で、一日の温度変化も酷似(こくじ)していることから、これらは熱的に同等の物質であることを示しています(図)。

 現在の太陽系科学では、ガスやダストだけしかなかった太陽系の始まりから、少しずつかたまりが合体して微惑星(びわくせい)という10キロ内外の天体が無数に生まれていき、それが私たちの住む地球など現在の大きな惑星(わくせい)に成長していくストーリーを描(えが)いており、それを探査機による探査や理論的な考察で立証しようとしています。

 つまり、地球みたいな岩石天体は、できたばかりの太陽系で、ふわふわのダストが集まって成長して形成されていったと考えられているのです。リュウグウは、ふわふわのダストからもっと密度の大きい天体が形成していく途中(とちゅう)にある天体なのかもしれないですね。(つづく)


的川泰宣(まとがわやすのり)さん

 長らく日本の宇宙開発の最前線で活躍(かつやく)してきた「宇宙博士」。現在は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の名誉(めいよ)教授。1942年生まれ。


日本宇宙少年団(YAC)

 年齢・性別問わず、宇宙に興味があればだれでも団員になれます。 http://www.yac−j.or.jp


 「的川博士の銀河教室」は、宇宙開発の歴史や宇宙に関する最新ニュースについて、的川泰宣(まとがわやすのり)さんが解説するコーナー。毎日小学生新聞で2008年10月から連載(れんさい)開始。カットのイラストは漫画家(まんがか)の松本零士(まつもとれいじ)さん。

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