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的川博士の銀河教室:的川博士の銀河教室 597 望遠鏡がとらえたほうき星 - 毎日新聞

壊れていくアトラス彗星

 昨年12月、米ハワイにある「ATLAS」(小惑星(しょうわくせい)地球衝突(しょうとつ)最終警報システム)の望遠鏡が一つの彗星(すいせい)を発見しました。当時は約20等級の非常に暗い彗星でしたが急に明るくなり、3月半ばには9等級にまで増光、日本の望遠鏡によっても写真が撮(と)られるほどになって(写真1)、一時は「このペースだと満月くらいになるかもしれない」と一挙に注目を浴びました。

 世界の天文ファンが期待していましたが、4月初めに思いもよらぬ事が起こりました。地上観測によって、アトラス彗星の核(かく)が分裂(ぶんれつ)しつつある様子が確認され、4月12日に撮影(さつえい)した画像では、核が複数に分裂した姿がとらえられたのです。

 彗星は「ほうき星」とも呼ばれ、核と呼ばれる小さな本体が、太陽に近づいたときだけ、その表面からガスやダスト(ちり)が出てきて長い尾(お)を引き、ほうきのような姿になることが分かっています。そしてその核は、ハレー彗星のような大彗星でもせいぜい十数キロの直径です。その核は、「汚(よご)れた雪玉」とも言われ、大部分が氷で、その中にダストが混じった構造をしています。太陽に接近したときだけ核からガスやダストが噴(ふ)き出(だ)すため、それがロケットから噴出(ふんしゅつ)する燃焼ガスと同じ働きをして推力を生じ、彗星の軌道(きどう)は極めて複雑で微妙(びみょう)な動きをすることが知られています。

 核が分裂した理由については、太陽に接近するにつれて温度が上がり、彗星の核の氷が部分的に水蒸気となって噴出した結果、自転が速くなって崩壊(ほうかい)した可能性があります。アトラス彗星の場合、崩壊が確認された頃(ころ)から減光が始まり、その後、増光→崩壊→減光、そしてまた増光とめまぐるしい変化が起きており、ハッブル宇宙望遠鏡による観測から、4月20日には核が大小およそ30個に分裂、4月23日になるとおよそ25個になっていることが確認されました(写真2)。

 このように彗星の核が分裂すると、たいていの場合は暗くて見えなくなるし、今回のアトラス彗星のような規模の分裂・破壊(はかい)は10年に1度か2度しか起きません。それだけに、この貴重な観測・撮影画像と、明るさや見え方、自転周期、軌道の変動などの関係を詳(くわ)しく解析(かいせき)することによって、これまで分かっていなかった彗星核の構造・性質が浮(う)かび上(あ)がってくる可能性があります。なお、ハッブル宇宙望遠鏡の撮影した画像から、この彗星の核はもともと250メートル程度と推定されています。

 アトラス彗星は、5月23日に地球から約1億1500万キロまで接近し、5月31日には太陽から3700万キロ以内のところを通過するはずです。彗星の謎(なぞ)に迫(せま)るこの絶好のチャンスを最大限に生かすべく、世界の天文関係者が観測に打(う)ち込(こ)んでいます。


的川泰宣(まとがわやすのり)さん

 長らく日本の宇宙開発の最前線で活躍(かつやく)してきた「宇宙博士」。現在は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の名誉(めいよ)教授。1942年生まれ。


日本宇宙少年団(YAC)

 年齢・性別問わず、宇宙に興味があればだれでも団員になれます。 http://www.yac−j.or.jp


 「的川博士の銀河教室」は、宇宙開発の歴史や宇宙に関する最新ニュースについて、的川泰宣(まとがわやすのり)さんが解説するコーナー。毎日小学生新聞で2008年10月から連載(れんさい)開始。カットのイラストは漫画家(まんがか)の松本零士(まつもとれいじ)さん。

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