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的川博士の銀河教室:的川博士の銀河教室 592 リュウグウの科学(その2) - 毎日新聞

人工クレーター形成のプロセスを解明

 昨年4月5日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機「はやぶさ2」は衝突(しょうとつ)装置(インパクター)を分離(ぶんり)しました。小惑星(しょうわくせい)リュウグウに降下する途中(とちゅう)でインパクターを爆破(ばくは)、その時に放出された2キロの銅製の衝突物体が弾丸(だんがん)のような形になって、リュウグウ表面に秒速約2キロで激突(げきとつ)しました。衝突によってリュウグウから多くの物質(エジェクター)が飛び出て、その一部はおそらく小惑星を脱出(だっしゅつ)し、多くは再び表面に落下しました。衝突の後に半円形の人工クレーターが形成されました。

 降下の途上(とじょう)で「はやぶさ2」から分離された小型カメラは、インパクターの衝突直後から8分間にわたって、その一部始終を撮影(さつえい)し、「はやぶさ2」搭載(とうさい)のカメラも衝突領域を撮影しました。その画像を解析(かいせき)した結果、人類史上初めて、小さな小惑星でクレーターがどのように作られるのかのプロセスが詳(くわ)しく解明されました。

 小型カメラの動画の中の1枚を抜(ぬ)き出(だ)した図1は、衝突から192秒後の様子です。エジェクターのカーテンのひろがりが確認できます。人工クレーターがまさに形成されている真っ最中の劇的瞬間(しゅんかん)です。

 図2は、「はやぶさ2」搭載カメラが、リュウグウ表面の同じ領域を、衝突の前後で撮影し比較(ひかく)したもの。衝突前(A)の地形が、衝突後(B)では、地面が掘(ほ)り起(お)こされて、半円形の人工クレーターのできていることがはっきりと見て取れます。地球上の火山は、まわりがリム(外輪山)で囲まれていますが、リュウグウの人工クレーターのまわりにも縁(ふち)が高くなったリムができています。

 少なくとも数十センチある多くの岩塊(がんかい)が移動しており、大きさ5メートル程度の大きな岩(イイジマ岩)が掘り起こされ、約3メートル北西に動いていました。一方もっと大きな岩(オカモト岩)は動いていません。オカモト岩のために、クレーターはその方向に成長することが阻(はば)まれ、形が半円形になったのですね。衝突現場は、このイイジマ岩とオカモト岩の間だったようで、イイジマ岩のすぐ右(東)に鮮(あざ)やかなくぼみ地形(ピット)が分かります。

 図3には、クレーター領域の高さを計測したものを地図に色分けして示しています。下のバーに、高さによる色分けの基準があります。クレーターの深さは1.7メートル(ピットの底まで含(ふく)めると2.3メートル)、リム頂上からピット底までの深さは約2.7メートルと推定されます。

 赤い点線で描(えが)かれた人工クレーターの直径は約14.5メートル、また黒い破線で描かれた人工クレーターを囲むリムの直径は約17.6メートルです。「はやぶさ2」チームはこの人工クレーターを「おむすびころりんクレーター」と名付けました。(つづく)


的川泰宣(まとがわやすのり)さん

 長らく日本の宇宙開発の最前線で活躍(かつやく)してきた「宇宙博士」。現在は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の名誉(めいよ)教授。1942年生まれ。


日本宇宙少年団(YAC)

 年齢・性別問わず、宇宙に興味があればだれでも団員になれます。 http://www.yac−j.or.jp


 「的川博士の銀河教室」は、宇宙開発の歴史や宇宙に関する最新ニュースについて、的川泰宣(まとがわやすのり)さんが解説するコーナー。毎日小学生新聞で2008年10月から連載(れんさい)開始。カットのイラストは漫画家(まんがか)の松本零士(まつもとれいじ)さん。

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