Search

的川博士の銀河教室:的川博士の銀河教室 595 リュウグウの科学(その3) - 毎日新聞

初代「はやぶさ」のサンプル分析

 「はやぶさ2」が小惑星(しょうわくせい)リュウグウから手に入れたサンプルを今年の末に持ち帰るのを、世界中の科学者は心待ちにしています。一方、その先輩(せんぱい)である初代「はやぶさ」が2010年に小惑星イトカワから持ち帰ったサンプルは、現在も分析が進められていて、たくさんの論文が発表されています。今週紹介(しょうかい)するのは、その一端(いったん)です。

 初代「はやぶさ」は、10年6月に地球に帰還(きかん)しました。そしてまず、小惑星イトカワが、二つの小天体が合体して形成された可能性がある(図1)と推定され、イトカワの進化の大筋が見えてきました。つまり、イトカワは、もっと大きな母天体に他の天体が衝突(しょうとつ)し、いったんバラバラになったものが長い時間をかけて再び重力で引き合いながら合体した状態と考えられるのです(図2)。現在もさらに詳(くわ)しい研究が続けられている中から、ごく最近発表されたものの一つを紹介しましょう。

 イトカワやリュウグウは地球近傍(きんぼう)小惑星の一つで、将来的には地球に衝突する危険もある「潜在的(せんざいてき)に危険(きけん)な小惑星」(PHA)に分類されています。地球に落下してくる隕石(いんせき)の正体が小惑星であることは、知っているでしょう。でも地球大気に突入(とつにゅう)して燃(も)え尽(つ)きたり、ほんの一部だけ地表に届く隕石だけの研究からは、隕石の元になった天体(母天体)である小惑星が、どのように進化しながら地球まで到達(とうたつ)したのか、その年代までは決められませんでした。

 最近になって、大阪大学(おおさかだいがく)などの研究グループは、イトカワからとりだしたカルシウムとリンを主成分とする鉱物(リン酸塩鉱物)を分析し、次のことを明らかにしました。

(1)約46億年前に結晶(けっしょう)として形成されたこと

(2)それが約15億年前にきわめて激しい衝撃(しょうげき)を受けていること

 この論文によって、長年謎(なぞ)であった地球近傍小惑星の歴史が初めて明確な年代として示されました。その他の報告も含(ふく)めて、現在までに明らかになっている事柄(ことがら)をまとめると、イトカワがたどった歴史は図3の通りです。その要点は、「約46億年前、直径20キロ以上のイトカワ母天体が小惑星帯(たい)で誕生し、約15億年前に壊滅(かいめつ)的な衝突イベントを経験した。その後、破片が再び集まって、今から40万年以内に頭部と腹部が合体、その後、地球軌道(きどう)を横切る軌道へ移動し、現在に至った」ということ。

 なお、数値計算からは、地球近傍小惑星の寿命(じゅみょう)は最大1000万年程度と見積もられており、将来イトカワは地球型惑星に衝突する可能性が高いと予想されています。いよいよ、「はやぶさ2」が採取したリュウグウのサンプルの地球帰還が楽しみになってきました。(つづく)


的川泰宣(まとがわやすのり)さん

 長らく日本の宇宙開発の最前線で活躍(かつやく)してきた「宇宙博士」。現在は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の名誉(めいよ)教授。1942年生まれ。


日本宇宙少年団(YAC)

 年齢・性別問わず、宇宙に興味があればだれでも団員になれます。 http://www.yac−j.or.jp


 「的川博士の銀河教室」は、宇宙開発の歴史や宇宙に関する最新ニュースについて、的川泰宣(まとがわやすのり)さんが解説するコーナー。毎日小学生新聞で2008年10月から連載(れんさい)開始。カットのイラストは漫画家(まんがか)の松本零士(まつもとれいじ)さん。

Let's block ads! (Why?)



"川" - Google ニュース
April 25, 2020 at 04:00AM
https://ift.tt/2S5uqCU

的川博士の銀河教室:的川博士の銀河教室 595 リュウグウの科学(その3) - 毎日新聞
"川" - Google ニュース
https://ift.tt/2TmBnRh
Shoes Man Tutorial
Pos News Update
Meme Update
Korean Entertainment News
Japan News Update

Bagikan Berita Ini

0 Response to "的川博士の銀河教室:的川博士の銀河教室 595 リュウグウの科学(その3) - 毎日新聞"

Post a Comment

Powered by Blogger.