ブラジルのジャイール・ボルソナーロ大統領は2月2日、イスラエルのメーカーが製造する、空気中の水蒸気から水を採取する機器をブラジル東北部に設置することを自身のツイッターで発表した。その前日にマルコス・ポンテス科学・技術・革新・通信相は、このメーカーが機器11機を連邦政府に寄贈し、政府は東北部の病院や学校など水不足が深刻な地域に設置し、技術を評価することを明らかにしていた。
ボルソナーロ大統領は2月2日付のツイッターの中で、「国内で(アマゾン川に次ぐ規模の)サンフランシスコ川の灌漑用水や掘り抜き井戸、淡水化に加えて、水不足に直面する東北部への対応策の選択肢が増えた」と述べた。「一連の事業を通じて地域の雇用創出と発展に貢献する」とも強調している。
ブラジル東北部の沿岸地域は早くから入植が進み、現在も人口が集積している。一方で、内陸地域は乾燥し、農業の生産性が低い地域だった。近年、内陸地域を中心に大豆などの大規模農業が拡大したものの、家族経営の中小零細農家向けや市民生活に欠かせない安全な水の供給不足が社会課題となっている。ブラジル地理統計院(IBGE)によると、2019年6月時点の東北部の推定人口は、ブラジル全土(約2億1,000万人)の27%強に相当する5,707万人に上り、南アフリカ共和国の人口にほぼ匹敵する。東北部の生活の質向上は地域格差是正の象徴的存在ともなっている。
イスラエルとのパートナーシップによるブラジル東北部の給水改善は、ボルソナーロ大統領が就任前から主張していたものだ。1年前には塩水の淡水化と水の再利用を学ぶため、ポンテス大臣が技術スタッフとともにイスラエルを訪問した。2019年11月には国家水資源庁(ANA)の専門家と職員がイスラエルで、水資源管理や廃水、下水管理、水の再利用、淡水化に関する覚書内容を議論している。
大統領は同年12月25日、東北部で、塩水化した井戸からの水回収と淡水化、貯水や家族経営農家へ配水するパイロット施設を近く設置する見通しであることを自身のツイッターで明らかにした。また、ブラジル駐在のイスラエル大使とともにイスラエル企業がブラジル東北部の学校や病院向けに空気中の水蒸気から水を作る実証実験を検討しており、将来的にこの設備の販売を行うため東北部での工場建設について交渉していることも表明している。
イスラエルには、空気中の水蒸気から清潔な飲料水を作り出すソリューションを開発したベンチャー企業「ウォータージェン」があり、世界各国へ事業展開を進めている。同社のウェブサイトには、ボルソナーロ大統領が2019年5月に同社を訪問し、機器で空気中から採取した水を飲む様子の写真が掲載されている。2月6日付「UOL」紙によると、同社の機器は最低湿度15%が条件で1日900リットルの水を生産する能力がある。
(大久保敦)
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February 21, 2020 at 12:41AM
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現地生産視野に、水不足のブラジル東北部で空気中の水蒸気から水を作る機器設置(ブラジル、イスラエル) | ビジネス短信 - ジェトロ(日本貿易振興機構)
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